臓器移植医療について
患者さんと医療者だけでなく、そこに善意の臓器提供を行う方(ドナー)がいらっしゃって、成立するのが臓器移植医療です。
日本では多くの方が移植を待ち望みながらも、それが実現せず、亡くなっています。しかし海外渡航移植への募金の呼びかけには多くの方が善意の募金をして下さいます。
決して、日本では善意が不足しているわけではありません。ただ、多くの方が持っている善意をうまく生かす仕組みが未整備なため、臓器移植医療は諸外国に比べて極端に遅れているのです。
人の死は心臓死と脳死の二つの定義が用いられます。
手順は次のようになります。
臨床的全脳死診断:臨床的に全脳死を診断する「法に規定する脳死判定を行ったとしたならば脳死とされうる状態にある」。不可逆的な脳死状態(Point of No Return)のこと。法的脳死判定:その上でさらに、臓器の摘出に際して、法律に則した脳死判定を実施した結果をもって臓器摘出可能な死体と判定する「法的脳死」とされる。
これらの死の定義と共に、移植をとりまく法律は平成9年(1997年)施行の臓器移植法によって初めて脳死からの臓器提供が可能となりました。しかし、本人の臓器提供の意思が書面で必要とされており、実際には意思表示のできない子どもは臓器提供者にはなれませんでした。同時に15歳未満の臓器提供は受けれない状況で、臓器移植を必要とする子どもたちは海外へ助けを求めるしか生きる道のない状態が続きました。
平成22年7月17日(2010年)施行の改正臓器移植法で、本人の意思が不明の場合家族の承諾で提供可能となり、本人の意思が法的に認められない15歳未満からの臓器提供が可能になると、徐々に臓器移植医療の環境が整備されてきました。
その結果、日本での臓器提供の件数は、
となっています。
【出自:公益社団法人日本臓器移植ネットワーク、National data - OPTN】
比較している米国の人口はおよそ日本の2.6倍で、人口当たりで換算しても桁違いの差があります。仮に米国と同じ条件であるならば日本では年間約4,000件の臓器提供が行われる計算になります。
「脳死」についての考え方も、世界では様々です。米国、フィリピン、シンガポール、オーストラリア、デンマーク、スウェーデンでは、法律で脳死を「人の死」と捉えています。また、台湾、ベルギー、フランス、カナダでは、法律には規定せずに医学会・医師会などの判断によって脳死を「人の死」と認めています。
脳死者からの臓器摘出について、米国、カナダ、オーストラリアなどは本人の意思が不明の場合は家族が提供を承諾すれば可能としています(OPTING IN)。また、スペイン、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、オーストリア、イタリア、フランスなどは本人が臓器提供を拒否する意思表示をしていなければ臓器提供が可能です(OPTING OUT)。